これまで書いてきた私自身の経験や実際の現場とあわせて、
アピアランスケアの背景にある調査や制度についても少しだけご紹介します
アピアランスケア実施の背景と根拠
1. 外見変化による心理的・社会的影響の認識
2015年に実施された研究では、がん治療に伴う外見の変化が患者の心理的負担や社会生活への影響を及ぼすことが指摘されています。具体的には、外見の変化により「かわいそうだと思われたくない」「外見の変化からがんとばれた」という意識が強いと、外出や対人交流を避ける傾向が見られることが示されています。 厚生労働省
2. 患者からの相談ニーズの存在
厚生労働省が2018年に実施した調査によると、がん治療による外見の変化について「相談できた」と回答した人は25.8%にとどまり、「相談したかったが、できなかった」と回答した人も存在しました。このことから、患者が外見の変化に関する悩みを相談できる体制の整備が求められています。
3. 医療現場での支援体制の必要性
アピアランスケアは単なる美容的な問題ではなく、身体的・心理的・社会的な問題に対する包括的な支援として位置づけられています。そのため、医療従事者が適切な支援を提供できるよう、研修や体制整備が進められています。
アピアランスケア導入の目的
これらの課題に対応するため、厚生労働省は以下のような取り組みを進めています
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アピアランスケアの普及と支援体制の整備:医療機関におけるアピアランスケアの提供体制を整備し、患者が外見の変化に関する悩みを相談できる環境を整えることを目指しています。
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医療者の研修と認知度向上:医療者の認知度を上げるために、基本的な研修会等にアピアランスケアを組み込み、人材確保のために研修修了者を拠点病院の要件に加えるなどの取り組みが検討されています。
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患者の生活の質向上と社会復帰支援:アピアランスケアを通じて、がん患者が少しでも自分らしく、前向きに社会復帰や日常生活に臨めるよう、見た目による不安を和らげる支援にも力を入れています。
これらの取り組みは、がん患者の生活の質を向上させ、治療と仕事や学業の両立を支援することを目的としています。
これらの調査や研究結果が厚生労働省がアピアランスケアの推進に取り組む根拠となっています。
外見のケアは医療の現場では未だ十分ではないというのが現実だそうです。
私は約10年前に看護師をしていましたが、そのころと大きな変化はないそうです。これから先、「アピアランスケア」がスタンダードなケアとなること、そしてその一役を担えたらいいなと思っております。